マーケティング論の前に。

先日とある筋の人たちにお約束していたマーケティングについての話ですが、その前に話しておきたい事があるので、今回はそのお話。それは一言で言えば、様々な角度から考えなくてはならないという事なんです。

日本の企業の(従来の)特徴

  • 企業イメージに重点を置く

という点が、まず挙げられます。企業名=まんまブランド名である事も少なくない。でも、このやり方には対象となる商品やサービスそのもののイメージが伝わりにくい、という欠点がありますね。
で、国内企業には他にも特徴があります。次に挙げられる特徴が

  • 高品質=ブランド力という差別化手法

という点。
製品の基本価値(クオリティ)で差別化を図り、それをブランドイメージとして謳っていく手法が未だ国内には少なくないです。例えば某家電メーカーの亀○工場ブランドなどはその典型的な例でしょう。
諸外国を含め商品の生産力/品質の向上は目ざましいものがあります。中○製は粗悪品ばっかり、なんてのはもう昔の話。冗談にもなりません。それに伴って、正直この手法による差別化は今後ますます難しくなっています。従ってブランドサーキットでいうところの「機能価値」のみに頼らず、情緒価値など別の部分でのブランディング、差別化が今後は重要になるでしょう。


日本には市場にも注意すべき点があります。それは

  • 国民性に合ったものでないと広まらない

という点。
Web2.0』という耳にタコなこのバズワード、まるでそれさえあれば全てがうまくいく魔法の呪文みたいに繰り返し口にされますが、当然Webは「2.0」であればいいというものではないですよね。
例えば、代表的なWeb2.0の例として米国最大のSNSマイスペース』。最近ソフトバンクが提携して日本版を展開していますね。ここの特徴は何より「自由度の高さ」にあります。招待制ではなく登録制で、CSSの知識さえあればマイページのデザインも自由自在、音源や動画/静止画などの使用も自由(日本版は現状JASRACと交渉中でまだ使えないらしいけど)などCGM(Consumer Generated Media)としてかなりの充実っぷりです。いわゆる『個人ポータル』を構築したい人にとっては非常に魅力的なモノだと言えますね。
がしかし。日本の市場では一部の層を除いて「あまりに自由度が高い=手間のかかるものは敬遠される」という流れがあって、あまりに自由だと何をどうすればいいかイメージが湧かなかったり、却って敷居が高いと感じてしまうケースが少なくないんですね。しかも一定の知識が必須となると、勉強しようと思う層よりも「そのまま使う」層の方がずっと多い。EZ GREEのようにスキンやら何やらがパックになっていて、そのパックを使うか使わないか選ぶだけで外観を「着せ換え」出来るという単純なインターフェースの方が、実際はずっとウケたりするんです。他の国でウケているからといって、それをそのまま日本に持ち込んでも成功するとは限らない(現にマイスペースは米国以外でシェアが圧倒的なわけでは決してない)という事ですね。


また、日本では未だWeb1.0のビジネスモデルが主流を占めるという現実があります。
例えば、mixi
一見すると、SNSという「いかにもWeb2.0っぽい」サービスではありますが、この立ち位置というかスタンスについて考えると、実はそうではない事が見えてくるんです。
mixiは広告を収益モデルとしています。つまり、ユーザ数に依存した古典的ブランディング広告ビジネス、いわゆるサブカルチャーに頼った従来のポータルサイトを「SNS」というシステムを利用して展開するというスタンスでビジネス展開しています。つまりYahoo!楽天と同様、旧来から存在する(=Web1.0)事業展開と言えるでしょう。多くのIT企業が展開している広告ビジネスも、同様にWeb1.0的(検索連動型も含めて)なものだと言っても構わないかもしれません。この場合、例えばどっかのアフェリエイトYouTube動画なんぞの利用をユーザに許可する(マッシュアップ)と、mixi側にとって肝心要の「広告枠」が確保できなくなってしまい、ビジネスモデルとして破綻してしまいます。


『仕掛け』を考える際には、一つの方向から切っただけで判断するのは危険だという事が少し見えてきましたか?実際にはもっともっと色々な角度から切って、それを色々な方向から見つめ、考えなくてはなりません。だから、例えばマーケティング戦略の方法を一つ覚えたらそれだけをひたすら使って考える、というやり方では、色々考えたけど結局時間の無駄だった、なんて事になりかねないんです。
これから何回かに渡ってマーケティング戦略の基礎について書いていく予定ですが、一つ一つの分析方法だったりを絶対のものだとは考えちゃダメです。得られた数値/データをどの角度で切るか、それで見えてくるものも変わってきますし、それぞれが重要な要素です。だからこそ色々な角度から切って考える必要があるという事を忘れないで下さいね。